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『魚食いの実況中継』マゴチ(日刊ゲンダイ2019年3月13日号掲載)
コチの名がつく魚の特徴は、背から押しつぶしたような体形にある。カレイは扁平(へんぺい)するが、コチの体は左右対称だ。マゴチは真ゴチ。市場価値において、この仲間を代表する。
ワニゴチ、トカゲゴチなどの名は、爬虫(はちゅう)類を連想させるからだろう。コチ科の眼球を覆う虹彩皮膜は、種によって形態が異なり、魚とは思えない目つきになる。マゴチは上まぶたが垂れ下がるようでも、40センチを超えれば高級魚だ。
魚屋に姿のまま並ばないのは値段よりも、料理が難しそうだから。アジやサバと違い、真上から見るとツチノコかオオサンショウウオのようだ。知らなければ魚とは思えないだろう。
腹を下にしたうつぶせの格好で、横に寝ないから困ってしまう。でも、どんな魚も、おろし方は基本通り。頭と尻尾は、背骨でつながっている。
手順が多少違っても、間違いではない。魚料理は魚の持ち味を生かすことが大切だ。マゴチならば引き締まった白身を噛みしめて気づく、香るような甘味だろうか。下ごしらえで丁寧に水洗いしたら、まな板に水気を残さないこと。それらを済ませたら、エラ口から鋭角に頭部を落とす。平たい後頭部に身を残さず、カマ部を大きく取るためだ。
マゴチの三枚おろしは腹側から中骨に沿って開いていく。背側を、まな板につける格好だ。左右のカマ部は、胸ビレの際から腹ビレとともに落とす。
腹骨をそぎ切った片身は、半円錐(えんすい)形だ。肛門付近から中骨に沿って身を開くと、皮が引きやすい。中骨を切り取れば、片身で2本のサクができる。
ウマ味の強い白身は、薄造りに適している。捨てがたい部分は胃袋だ。開いて洗ったら、湯通しして細切りにする。刺し身に添えれば、マゴチも喜ぶってモンだ。
もう1カ所は、頭部左右に残る頬肉だ。小指くらいの身を、カマ部と一緒に塩焼きにすれば、骨をしゃぶりながらのビーカーウーロンハイがたまらない。
関東ではネズッポ科を総じてメゴチと呼ぶ。江戸前の天ぷらダネで人気の魚だが、コチ科に本家のメゴチがいるから、話はややこしくなる。
◆西潟正人(にしがた・まさひと)=魚の伝道師。東京海洋大海洋生命科学部非常勤講師(魚食文化論)。
#マゴチのさばき方#西潟正人#日刊ゲンダイ